
恋愛中であれば、相手との違いの多くはそれほど気にならない。
週に一度会い、ときどき外食をして、楽しい時間を過ごして別れる。お互いの生活のすべてを見るわけではないからだ。
しかし、結婚すると事情は変わる。
毎日一緒に眠り、一緒に起き、同じ食卓につく。そこで初めて、それまで見えていなかった生活習慣や価値観の違いが見えてくる。
「代表。紹介してくださった女性は本当にいい方なんですが、一つだけ引っかかることがあるんです」
ある男性が、慎重に話し始めた。
「どんなことですか?」
「きれいで、優しくて、僕ともよく合います。この人が運命の相手なのかなと思うくらいです」
ところが、そこで男性の声が少し重くなった。
「でも、一つだけ気になるんです」
「何ですか?」
「食の好みが、あまりにも違うんです」
最初は、それほど大きな問題なのだろうかと思った。
しかし詳しく聞いてみると、二人の食生活はかなり違っていた。
女性は野菜中心の食事を好んでいた。菜食主義というわけではないが、肉料理はほとんど好まない。
一方、男性は正反対だった。肉料理が好きで、「肉を食べてこそ元気が出る」というタイプだった。
男性はこう話した。
「最初の何回かのデートでは、どのお店に行っても特に問題はありませんでした。
でも、会う回数が増えるにつれて、お店やメニューを選ぶたびに気になるようになってきたんです。できるだけ彼女に合わせたいとは思います。
でも、だからといって毎日野菜だけを食べるわけにはいかないでしょう」
せっかく「この人なら」と思える女性に出会ったのに、食の好みという一つの違いが気になっていた。
恋愛中なら、それぞれが好きなものを食べればいい。
しかし結婚すれば、食事は毎日の生活になる。
何を食べるか。
どこで食べるか。 誰が料理をするか。
一見すると小さな違いでも、それが毎日繰り返されれば、夫婦生活にとって無視できない問題になることもある。
私は男性にこう話した。
「食の好みだけを見るのではなく、二人の関係全体を一度整理してみてください」
外見、性格、会話、家庭環境、生活習慣、身体的な相性、一緒にいるときの心地よさ。そして、食の好み。
「食の好みが違うことを補えるくらい、ほかの部分に良いところがありますか?」
男性は少し考えてから答えた。
「あります。たくさんあります」
「それなら、もう少し二人の関係を進めてみてもいいと思います。本当に相手を大切に思っているなら、お互いに少しずつ合わせながら、二人なりの生活の形を見つけていくこともできますから」
そして、こう付け加えた。
「逆に、ほかの部分にもそれほど魅力を感じていないうえに、毎日の食生活まで大きく違うのであれば、無理に関係を進める必要はないでしょう」
男性は再び考え込んだ。
彼は、その女性のことが好きだった。
だからこそ悩んでいるのだ。
好きでなければ、「食の好みが合わない」という理由だけで関係を終わらせることもできる。
しかし、本当に大切に思う相手だからこそ、小さな違いまで「結婚したあと、大丈夫だろうか」と気になってしまう。
私は最後に尋ねた。
「では、食の好みまでぴったり合う女性を、もう一度最初から探しますか?」
男性はしばらく黙ったあと、こう答えた。
「……それは、また違いますね」
結婚相手を探していると、さまざまなことが気になる。
条件も、性格も、生活習慣も、食の好みも大切だ。
しかし、すべてが自分と同じ相手を探すことと、違いがあっても一緒に暮らしていける相手を探すことは、同じではない。
結婚では、「何が違うか」だけでなく、その違いを二人でどう受け入れ、調整していけるかも大切なのだと思う。
ちなみに、食の好みが大きく違う夫婦が外食するときには、それぞれが好きなものを選べるビュッフェ形式のお店も、案外いい選択肢なのかもしれない。

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